COLUMN コラム
北海道で生きるということ 〜営業マンとしての30年〜

私は道外の出身ですが、気がつけば大学を卒業し当社で営業職として30年が経ちました。気候も文化も異なるこの地で過ごす中で、最初は戸惑うこともありました(今でもたまに…)。冬の寒さや車の運転、会話のテンポや距離感——小さな違いに戸惑いながらも、ひとつひとつを経験として積み重ねていくうちに、自然と北海道の風土に馴染んでいきました。そして今では、「自分はもう、北海道の人間なんだ」と思えるようになりました。
建設コンサルタントである当社で働く私は道内各地を訪れる機会に恵まれています。札幌のオフィスを拠点に、道内各地訪れた町は数え切れません。各地に広がる風景は実に多様で、太平洋側と日本海側では空の色すら違って見える気がします。漁業が盛んな港町のにぎわいや、山間の小さな集落の静けさ。どの場所にも、その土地で暮らす人の時間の流れと、生活の息づかいがあります。
出張の合間に立ち寄った観光名所や景勝地は、まさに北海道の魅力そのものです。春には芽吹く緑に心が弾み、夏はからりとした空気と広い空に気持ちが解き放たれます。秋の紅葉は短くも鮮烈で、冬はまさに「試される大地」。ときにホワイトアウトで車を止めざるを得ないこともありますが、その中で聞こえる雪の音、夜のしんとした静けさに、私はどこか安心感すら覚えるようになりました。
この仕事を通じて、私が何より大切にしているのは「人との会話」です。訪れる先々で出会う担当者の方々とのやり取りには、単なる業務以上の意味があります。最初は少しよそよそしかった会話が、何度か顔を合わせるうちに自然と笑顔がこぼれるようになり、世間話やお互いの趣味の話、地元の話題で盛り上がる。
そうした積み重ねが、信頼という目に見えない財産を築き、道内各地に「第二、第三のふるさと」ができていく。そうした一つひとつの出会いが、営業という仕事に「温かさ」と「意味」を与えてくれているのです。
「北海道は広いな」と、本州に住む友人にはよく言われます。確かにその通りです。しかし、この広さがあるからこそ、それぞれの土地に個性があり、そこで暮らす人々に出会える楽しさがあります。地図で見ればただの点と線の移動も、私にとってはそのひとつひとつが記憶に残る「旅路」です。天気や道路状況、季節ごとの風景までもが、私のなかに刻まれています。
これからも、北海道という大地の四季の移ろいを肌で感じながら、人との出会いに感謝し毎日を丁寧に積み重ねていきたいと思います。30年という時間は、通過点にすぎません。これから先も、変わらぬ姿勢で、人との縁を大切にして歩んでいきたいと願っています。
この記事を書いた人
常務取締役粟津 忠彦
