COLUMN コラム
建設コンサルタントに必要な「見えない力」―感情労働という仕事

はじめに
建設コンサルタントの仕事と聞くと、図面や計算、専門的な技術力を思い浮かべる方が多いでしょう。もちろんそれは業界の根幹です。しかし、実はもう一つ欠かせない力があります。それが 「感情労働」 です。
この言葉はサービス業でよく使われますが、建設コンサルタント業界でも日常的に求められるスキルなのです。
感情労働とは?
簡単に言えば、「相手に安心感や信頼感を与えるために、自分の感情をコントロールする労働」です。
例えば、笑顔で接客する店員さんを想像するとわかりやすいですが、私たちの業界でも同じような場面があります。プロジェクトを進めるうえで、行政、地域住民、協力会社、そして社内メンバーなど、多くの人と関わります。その中で、常に冷静で前向きな態度を保つなど、本心とは異なる感情を表に出すことが求められる労働です。
どんな場面で必要になる?
- 住民説明会での対応
道路や河川の工事では、地域の方々から「騒音が心配」「安全は大丈夫?」といった声が上がります。そんな時、私たちは誠意を持って説明し、安心してもらう必要があります。時には厳しい意見を受け止める場面もありますが、感情を乱さず、信頼を築くことが大切です。 - 行政との打ち合わせ
予算やスケジュールの調整は、時に緊張感のある交渉になります。ここで必要なのは、柔軟な対応と前向きな姿勢。感情をコントロールし、信頼関係を保つことがプロジェクト成功の鍵です。 - 社内でのトラブル対応
設計の見直しや工期の遅れなど、現場では予期せぬ問題が起こります。そんな時、チームの不安を和らげ、前向きに取り組める雰囲気をつくるのも重要な役割です。
なぜ重要なのか?
感情労働は目に見えませんが、プロジェクトを円滑に進めるための「潤滑油」です。技術だけでは解決できない課題を、人間力で乗り越える。それが建設コンサルタントの真価だと思います。
どう向き合う?
感情労働は負担になることもあります。長期プロジェクトや責任の重さから、精神的な疲労を感じることもあるでしょう。だからこそ、
- チームで情報共有をして孤立しない
- 心理的に安心できる職場環境をつくる
- 必要なら外部の専門家に相談する
こうした工夫が大切です。
まとめ
建設コンサルタントの仕事は、図面や計算だけではありません。人と人との信頼を築く「見えない力」が、業界を支えています。技術と人間力の両方を磨きながら、より良い社会づくりに貢献していきたいと思います。
この記事を書いた人
常務取締役小川 達也



