ダイシン設計株式会社|札幌の総合建設コンサルタント

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連載コラムVol.5 災害

連載コラムVol.5 災害

この業界に長く身を置いていると「災害」という単語に敏感になる。天気予報に一喜一憂し、予定や計画の変更を余儀なくされることも多い。これから災害の多い時期となるため、弊社職員も不安を感じているのではないでしょうか。
災害というと異常気象による風水害をイメージする方が多いでしょう。災害は法的に「暴風、こう水、高潮、地震その他の違法な天然現象に因り生ずる災害」と定義され、私たちは自然現象が原因で機能を損失した社会インフラの復旧に係る調査と設計を主な業務として担当します。
災害が発生し対応が求められると、私たちはタイトなスケジュールの中で、高い理念と倫理感をもってその任務に当たらなければなりません。なぜなら、災害復旧は「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」に基づいて行われ、「災害の速やかな復旧」と「公共の福祉の確保」が目的とされているためです。この二つの目的を達成させるため、調査と設計を約1ヶ月で仕上げることが求められ、ほぼ24時間体制での作業が必要になります。
これまで述べたのは私たちの生活空間で発生する従来型の災害です。ここからは災害の将来像について考察1)してみます。
今後の社会インフラは、電気、電子、電波、人工衛星への依存度が高まり、宇宙環境の影響を受けやすくなると予想されます。国連では既に宇宙環境の変化による電波障害、磁気嵐、電離嵐を災害と位置づけており、わが国でも総務省が検討会を開催しています。
「宇宙天気災害」と呼ばれるこれらの特徴は、「五感でわかりにくい」「被害が長期化する」「被害が広域に及ぶ」という点です。具体的には、通信・放送・スマホの停止、位置情報の不全、ドローン等の衝突、航空機・船舶の運航見合わせ、停電など発生し、高度情報通信を前提とした現代社会の基盤が崩れる可能性があります。
最も懸念されるのは、宇宙天気災害と従来の自然災害が同時に発生する複合災害です。この場合、復旧自体が不可能になることも想定されます。専門家は宇宙天気災害も自然災害として災害対策基本法に基づく対応が必要だと警告していますが、行政の認識はまだ低いのが現状です。
これまで私たち建設コンサルタントは、土木工学、社会環境工学、地球物理学の知識を活かして災害対応を行ってきました。しかし今後は、宇宙物理学や電気・電子・電波などの知識の習得、法整備、さらには宇宙天気分野への積極的な投資が必要になるでしょう。
参考文献
1) 日本技術士会;IPEJ Journal,2025.7,pp.12-15

この記事を書いた人

専務取締役田村 智樹

専務取締役 田村 智樹
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