COLUMN コラム
連載コラムVol.4 タイムトンネル

1960年代、「タイムトンネル」というアメリカのSFドラマが放映されていた。未完成のタイムトンネルに二人の男性科学者が誤って入ってしまい時空を彷徨う放浪者になってしまう物語である。
さて、小生、こう見えても土木技術者の端くれとして、今までソコソコの設計業務を担当してきた。道路構造物、橋梁、トンネルなど...その中でもトンネル設計を長らく担当してきた。
トンネルは地中を通る地下構造物である。山肌を開削して掘り進んで新たな空間を作り、そこに道路や鉄道などの社会インフラが建設される。設計段階では直接見ることのできない地中を相手とするため、結構な想像力とセンスを必要とする(笑)。
施工になると、これまたロマンあふれる筋書きのないドラマが展開されるのである。異常出水や崩落、変形で一夜にして断面がつぶれてしまうことも、異常な圧力による岩盤の爆発を伴う崩壊と地震の誘発など、山の神様が私たちを試すかの様に試練を与えてくる。そして、その試練を乗り越える度に感動が生まれる。そこに従事する者は暗闇の中、貫通という一筋の光を求めひたすら前進していくのである。
時に施工中のトンネルは、私たちを太古の世界に案内してくれる。小生が担当した業務の中で、余市赤井川線の冷水トンネルでは、今から150万年前にこの地に生い茂っていた木々が炭化した状態で出現した。火砕流により一瞬で朽ちたのでしょう。150万年の時空を超えて私たちにその一瞬のドラマを伝えてくれるのです。
泊共和線の国富大山トンネルでは、右の写真の様な柱状節理が出現した。地質年代は新第三紀中新世、今から2,300万~500万年前の地層です。 柱状節理は、溶岩流が冷えて縮むときに多角柱の割れ目が規則的に発生する構造で、冷却面に対して垂直に形成される特徴があります。
この柱状節理は,垂直方向対して左側に30度程度傾いていますから、太古の時代、この地は、右側が頂上方向の斜度30度程度の斜面であったと考えられます。では、ここからは2,300万~500万年前のある日に起きた火山噴火の模様を再現してみましょう。
当時、地表であった写真の場所は、右方向に活動中の火山がそびえ立っていました。ある日、噴火が始まり火口からは燃え滾る真っ赤な溶岩が流出します。流出した溶岩は山肌を伝いこの地に流れてきます。溶岩流は1,000~1,200度に熱せられ真っ赤な様相をし、写真の右側から左側に絶え間なく流れていきます。多分、このような状況だったのでしょう。
このように施工中のトンネルは、時代を遡るタイムトンネルで、そこに従事する者は、貫通という目的を持った時空の旅人なのです。
現代に通じる一筋の光が見えてきました。長かった時空の旅も終わりです。
さあ、貫通だ!
この記事を書いた人
専務取締役田村 智樹
